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鑑定業法・登録・税務読了 約7

鑑定会社を売ったら税金はいくらか?株式譲渡「約20%」と事業譲渡の課税の枠組みを鑑定士が整理する

鑑定会社を売却したときの税金は手法で大きく変わります。個人株主の株式譲渡は譲渡所得として申告分離課税(所得税・住民税合計約20%)、事業譲渡は法人なら法人税、個人事業なら所得区分ごとの課税に加え消費税の対象資産もあります。退職金との組み合わせという一般的な論点も含め、手取りを考える前提となる枠組みを整理します。

「売却価格が3,000万円と言われても、税金を引いたらいくら残るのか分からない」。オーナー鑑定士にとって重要なのは譲渡価額そのものではなく、税引後の手取りです。ところが、税金は手法(株式譲渡か事業譲渡か)、売り手が法人か個人か、退職金をどう組み合わせるかで大きく変わります。

本記事では、具体的な税額計算ではなく、「どの手法なら、誰に、どの税金がかかるのか」という枠組みを不動産鑑定士の視点で整理します。私たちは税理士ではありません。税率や適用の可否、具体的な税額は必ず税理士にご確認ください。ただし枠組みを知らないまま手法を選ぶと、同じ譲渡価額でも手取りが大きく変わりかねません。手法選択の前提として、ぜひ押さえてください。

株式譲渡の課税: 個人株主は「約20%」が一般的な枠組み

鑑定会社の多くはオーナー鑑定士が株式の全部または大半を保有しています。その株式を買い手に売る株式譲渡では、売り手個人に譲渡所得が生じます。

申告分離課税で、給与や鑑定報酬とは合算しない

個人が非上場株式を譲渡した場合の所得は「譲渡所得」として、他の所得と分離して課税されます(申告分離課税)。税率は所得税15%・住民税5%の合計20%に復興特別所得税が加わり、合計で約20%(20.315%)というのが一般的な枠組みです。総合課税のように所得が大きくなるほど税率が上がる仕組みではないため、譲渡価額が大きい場合でも税率は一定です。

課税対象は「譲渡価額 − 取得費 − 譲渡費用」です。取得費は設立時の出資額が基本で、鑑定会社の場合は数百万円以下のことが多いため、譲渡価額の大半が課税対象になる点は理解しておく必要があります。仲介手数料は譲渡費用に含まれるのが一般的です。

法人株主の場合は法人税の枠組み

売り手が法人(持株会社など)である場合、株式の譲渡益は法人の益金として法人税等の対象になります。個人の約20%とは異なる枠組みになるため、持株会社を経由して保有している場合は税理士との事前の確認が欠かせません。

想定されるケース

都内・鑑定士3名の法人(代表60代、売上約6,000万円・営業利益約800万円)を、オーナーが株式譲渡で中堅鑑定会社に売却するケース。譲渡価額は年買法(純資産+営業利益の1〜3年分)を目安にレンジで交渉し、オーナー個人には譲渡所得として約20%の税率が適用されるという枠組みで手取りを試算する形が考えられます。実際の税額は取得費・譲渡費用・その他の所得状況によって変わるため、税理士に試算を依頼します。

事業譲渡の課税: 法人・個人・消費税の3つの視点

事業譲渡は、鑑定業という事業を構成する資産・契約・従業員を買い手に移す手法です。売り手が法人か個人かで課税の枠組みが変わり、さらに消費税の論点が加わります。手法の違いは 株式譲渡と事業譲渡の違い をご覧ください。

売り手が法人の場合: 譲渡益に法人税等

法人が事業を譲渡すると、譲渡対価と資産の帳簿価額の差額が譲渡益として法人の益金になり、法人税等の対象になります。のれん(顧客基盤や信用力などの超過収益力に対する対価)も譲渡益に含まれます。譲渡代金は法人に入るため、オーナー個人が受け取るには、その後に配当や退職金として法人から個人へ移す段階で再度課税されるという「二段階」の構造になります。この点が、個人株主の株式譲渡との最大の違いです。

売り手が個人事業の場合: 資産ごとに所得区分が分かれる

個人の鑑定事務所(個人事業)には株式がないため、承継の手法は事業譲渡に限られます。この場合、譲渡対価は資産ごとに所得区分が分かれるのが一般的な枠組みです。たとえば、事務所の什器・備品などの固定資産は譲渡所得、のれん(営業権)は総合課税の譲渡所得、棚卸資産に相当するものは事業所得として扱われる、といった整理です。所得区分によって税率も計算方法も異なるため、譲渡対価の内訳(何にいくら払うか)を契約書でどう配分するかが税額に直結します

消費税: 譲渡する資産に「課税資産」がある

事業譲渡は税務上「資産の譲渡」であるため、消費税の対象資産が含まれます。事務所の備品、建物、のれんなどは課税資産にあたるのが一般的で、土地や売掛債権は非課税です。売り手が消費税の課税事業者であれば、課税資産の譲渡対価に消費税が上乗せされ、買い手が負担して売り手が納付します。契約書で「税込」「税別」を明記していないと、後から争いになります。

税額計算は税理士に

ここで挙げた所得区分・課税資産の整理は一般的な枠組みであり、個々の資産の性質や契約の内容によって扱いが変わります。具体的な税額・適用可否は税理士にご確認ください。

退職金との組み合わせという一般的な論点

株式譲渡の際に、譲渡価額の一部を「役員退職金」として売り手法人からオーナーに支払い、その分だけ株式の譲渡価額を下げる、という組み合わせが一般的に論じられます。

なぜ組み合わせが検討されるのか

退職所得は、勤続年数に応じた退職所得控除を差し引いた残額の2分の1に課税される仕組み(分離課税)で、長年経営してきたオーナーの場合は負担が軽くなることがあるためです。買い手側から見ても、退職金を支払った分だけ会社の純資産が減り、株式の譲渡価額が下がるため、買収資金の負担が変わります。退職金は法人の損金となる一方、不相当に高額な部分は損金として認められない扱いがあるため、金額の妥当性が論点になります。

落とし穴: 買い手との利害調整と実態の要件

退職金を支払うのは売り手法人ですが、譲渡後は買い手の会社になります。退職金の支払いが会社の資金繰りにどう影響するか、退職金の原資を譲渡対価から充てるのか、譲渡前に会社の資金で支払うのかを、買い手と合意しておかなければなりません。また、退職金として扱われるには「実際に退職している」ことが前提となるため、並走期間中に役員として残る場合の扱いには特に注意が必要です。退職金の額・支払時期・並走の形は、税理士と弁護士の双方に確認した上で契約に落とし込んでください

手取りを最大化する前に確認すべき3つのこと

税金の枠組みを知った上で、手法を決める前に確認していただきたいことがあります。

1. 役員借入金と純資産の整理

鑑定会社では、オーナーが会社に貸し付けている役員借入金が残っていることがよくあります。株式譲渡では、役員借入金は譲渡価額とは別に返済されるのが一般的ですが、その扱いを整理しないまま価格交渉に入ると、手取りの見込みが狂います。譲渡価額の目安は 鑑定会社の売却相場と年買法 をご覧ください。

2. 手法選択は「登録」と「税金」の両面で

事業譲渡は税務上の二段階課税や消費税の論点がある一方、鑑定業者登録の観点では買い手側で新規登録または事務所追加が必要になります。株式譲渡は登録が維持され、個人株主の課税も一段階です。どちらが有利かは、売り手の形態(法人か個人か)、買い手の状況、譲渡価額の規模で変わります。税金だけで決めず、登録面と合わせて比較してください。

3. 仲介手数料は譲渡費用として織り込む

仲介手数料は手取りを減らす要素であると同時に、株式譲渡では譲渡費用として課税所得から控除されるのが一般的です。手数料の水準と算定方法は契約前に確認すべき事項で、当社は 手数料 で料率表を公開しています。確認の観点は 中小M&Aガイドラインと仲介手数料 にまとめています。

まとめ

鑑定会社の売却にかかる税金は、手法と売り手の形態で枠組みが変わります。要点は次の3つです。

  • 個人株主の株式譲渡は譲渡所得の申告分離課税で、所得税・住民税合計約20%が一般的な枠組み
  • 事業譲渡は法人なら法人税等(法人から個人への移転で二段階)、個人事業なら資産ごとの所得区分で課税され、消費税の対象資産もある
  • 退職金との組み合わせは一般的な論点だが、金額の妥当性・支払時期・並走の形が要件に関わるため専門家の確認が必須

繰り返しになりますが、税率や適用の可否、具体的な税額は必ず税理士にご確認ください。当社は不動産鑑定士として、税務の専門家と連携しながら、登録・価格・税金の3つを合わせて最も無理のない手法をご一緒に検討します。売却をご検討のオーナー鑑定士様、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談も承っております。無料相談はこちら。売却の全体像は 売却をご検討の方へ、価格の目安は 企業価値・売却相場 をご覧ください。

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本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の案件に対する助言ではありません。記載の価格・相場は目安であり、実際の譲渡価額は個別の交渉により決まります。税務・法務の具体的な判断は、税理士・弁護士等の専門家にご確認ください。
吉田 健人

執筆者

吉田 健人代表取締役社長・不動産鑑定士

外資IT企業で法人営業に従事するかたわら、不動産鑑定士として株式会社KRE Appraisalを設立。鑑定実務と外資ITの営業・M&A支援の経験を活かし、不動産鑑定会社のM&A・事業承継を支援している。

不動産鑑定士/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士

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