不動産鑑定士の30歳代以下はわずか7%。データで読む鑑定業界の高齢化と、鑑定会社のM&Aが増えると考えられる理由
不動産鑑定士8,789人・鑑定業者3,398業者という登録状況から、所属鑑定士の13年間で約11%減、知事登録業者の▲13%、30歳代以下7%、地価公示評価員の高齢化まで、国土交通省の公表データを出典付きで読み解きます。地方の1人事務所に何が起き、なぜ鑑定会社のM&Aが増えると考えられるのかを整理します。
「若い鑑定士が入ってこない」「地価公示の分科会が年々高齢化している」「隣の市の事務所が閉めたので、うちに固定資産税評価の話が回ってきた」。あなたも、現場でこうした変化を肌で感じているのではないでしょうか。
肌感覚は、実は国土交通省の公表データと一致しています。この記事では、鑑定士である私たちが、業界の高齢化と担い手不足を数字で確認し、そこから「なぜ鑑定会社のM&Aが増えると考えられるのか」を整理します。数字はすべて出典を付け、改変していません。
登録者数から見える鑑定業界の現在地
鑑定士8,789人、業者3,398業者
国土交通省「不動産の鑑定評価に係る登録状況」によれば、令和7年1月1日現在の不動産鑑定士は8,789人、不動産鑑定士補は1,187人です。不動産鑑定業者は大臣登録と知事登録を合わせて3,398業者です。
不動産鑑定士 8,789人、不動産鑑定士補 1,187人、不動産鑑定業者 3,398業者(大臣登録・知事登録の計)。
「1業者あたり1.3名」という構造
鑑定業者に所属する不動産鑑定士等は令和6年に4,496名です。業者数3,398で割ると、当社の単純計算で1業者あたり1.3名程度になります。つまり業界の大半は、代表鑑定士1名に事務職員が数名という小規模事務所で成り立っています。代表が引退すれば事務所ごと消える構造だということを、まず押さえておいてください。
所属鑑定士は13年で約11%減、地方の減少が顕著
5,057名から4,496名へ
鑑定業者に所属する不動産鑑定士等は、平成23年の5,057名から令和6年の4,496名へ、561名・約11%減少しました。
内訳を見ると、大臣登録業者の所属者は990名で▲3.4%にとどまる一方、知事登録業者の所属者は3,506名で▲13%です。大臣登録業者は2以上の都道府県に事務所を持つ比較的大きな会社、知事登録業者は1都道府県内の事務所ですから、この差は「地方の中小事務所から人が減っている」ことを意味します。
鑑定業者に所属する不動産鑑定士等は令和6年4,496名で、平成23年の5,057名から561名・約11%減。大臣登録業者所属は990名(▲3.4%)、知事登録業者所属は3,506名(▲13%)。
地方の1人事務所で起きていること
想定されるケースを一つ挙げます。地方都市で鑑定士1名、代表70代の個人事務所。地価公示評価員を長年務め、固定資産税評価も市から受託し、売上は約1,500万円。代表が引退を考えても、県内に後継候補の若手鑑定士はほとんどおらず、都市部の鑑定士に声をかけても地方への移住はハードルが高い。結果として「閉めるしかない」と考えてしまう。
この事務所が閉まると、その地域の公的評価の担い手が一人減り、残った事務所への負担が集中します。地方の減少は、個々の事務所の問題であると同時に、地域の評価インフラの問題でもあります。
年齢構成:30歳代以下は7%
25%から7%へ、20年での変化
不動産鑑定士の年齢構成は、令和5年時点で40〜60歳代が74%、30歳代以下は7%です。30歳代以下の割合は平成15年に25%、平成25年に18%でしたから、20年で3分の1以下に縮小しました。
| 年 | 30歳代以下の割合 |
|---|---|
| 平成15年 | 25% |
| 平成25年 | 18% |
| 令和5年 | 7% |
「採用できない」が「承継できない」に直結する
30歳代以下が7%という数字は、事務所の承継に直接響きます。従来、鑑定事務所の承継は「勤務鑑定士を育て、暖簾分けか事務所ごと譲る」形が主流でした。しかし採用そのものが難しい今、内部承継の候補がいない事務所が増えています。内部に後継者がいないなら、外部から探すしかない。それが鑑定会社のM&Aです。
地価公示評価員の高齢化
2,477名から2,264名へ
地価公示の鑑定評価員は令和6年に2,264名で、平成29年の2,477名から約8.6%減少しました。年齢構成の変化はさらに顕著で、50代の割合が29.7%から43.4%に増えた一方、30代は4.5%から1.6%、40代は33.7%から21.2%に減っています。平均年齢は50代後半です。
| 年代 | 平成29年 | 令和6年 |
|---|---|---|
| 30代 | 4.5% | 1.6% |
| 40代 | 33.7% | 21.2% |
| 50代 | 29.7% | 43.4% |
地価公示鑑定評価員は令和6年2,264名(平成29年2,477名から約8.6%減)。50代が29.7%から43.4%に増加、30代は4.5%から1.6%、40代は33.7%から21.2%に減少。平均年齢は50代後半。
公的評価の空白が生まれる
地価公示評価員は個人として委嘱され、会社には紐づきません。評価員が引退すれば、その分科会の地点は他の評価員に再配分されるか、新たな評価員を確保する必要があります。40代の減少は、10年後に50代の中核を担う層が薄いことを意味します。公的評価をどう引き継ぐかは、「公的評価は引き継げるのか」で個別に整理しています。
なぜ鑑定会社のM&Aが増えると考えられるのか
供給側:引退期のオーナーが増える
40〜60歳代が74%という構成は、今後10〜15年で引退期を迎えるオーナー鑑定士が集中的に増えることを示します。内部承継の候補がいなければ、選択肢は廃業か外部への承継の二つです。廃業と売却の比較は「廃業と売却、どちらが得か」で扱っています。
需要側:拠点拡大と鑑定機能の獲得
一方で、買い手側のニーズも存在します。都市部の中堅鑑定会社は、地方の公的評価や金融機関との関係を持つ事務所を拠点として取り込みたい。不動産会社や士業法人は、自前の鑑定機能を持ちたい。独立を志す勤務鑑定士は、ゼロから顧客を作るより既存事務所を引き継ぎたい。供給と需要が同時に存在するのに、両者をつなぐ仕組みが業界にほとんどなかった。それが私たちが鑑定会社専門のM&A仲介を始めた理由です。
参考
まとめ
- 不動産鑑定士8,789人・業者3,398業者で、1業者あたり1.3名程度の小規模構造です
- 所属鑑定士は13年で約11%減、知事登録業者では▲13%と地方の減少が顕著です
- 30歳代以下は7%まで縮小し、内部承継の候補を確保しにくくなっています
- 地価公示評価員も8.6%減・平均50代後半で、公的評価の空白が懸念されます
- 引退期のオーナー増加と買い手ニーズが同時に存在し、鑑定会社のM&Aは増えると考えられます
全体像は「不動産鑑定会社のM&A完全ガイド」を、ご自身の事務所の位置づけは「事業承継・後継者不在のご相談」をご覧ください。データを見て「うちも他人事ではない」と感じたオーナー鑑定士の方は、ぜひ一度ご相談ください。初回の無料相談も承っております。無料相談はこちら
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執筆者
吉田 健人代表取締役社長・不動産鑑定士
外資IT企業で法人営業に従事するかたわら、不動産鑑定士として株式会社KRE Appraisalを設立。鑑定実務と外資ITの営業・M&A支援の経験を活かし、不動産鑑定会社のM&A・事業承継を支援している。
不動産鑑定士/宅地建物取引士/賃貸不動産経営管理士
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